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失敗できる場所

180930 母

何のきっかけもなく心が暗転する。区民ホールに行ってオーケストラの演奏を聴いて、あんなに浮き立っていたさっきまでが同じ自分とは思えない。
このままずっと、母親に抗えないでやっていくのだ。分かり合おうと挑むたび、その考えの甘さを思い知らされる。どんな配慮も遠慮も、あの人は当然のように受け取ってさらに多くをこちらに求める。抗ったって、論理のない理不尽が暴発していっそう苦しめられるだけだ。仰せのままに生きるしかない。
鹿の角が毎年生え変わるみたいに、抵抗の牙も一定の期間ごとに抜けつ生えつつを繰り返しているんだと思う。ちょうど今は、母という存在の異様さを冷静にわかっていて、何とかこの隷属から抜け出さんとする意志を保てている時期だ。試みて、試みて、挫けてしまった何度目かに、きっとこの牙はまた抜け落ちる。牙を抜かれて、へつらう以外を忘れる時が来る。かろうじて今、胸の内に残っている反逆心も、そろそろ断頭台の前だ。この町のこの家に、隅から隅まで希望はない。